2012年6月5日火曜日

発達障害・睡眠グループ


当グループは、小児期の睡眠障害と発達障害の臨床/研究を専門としております。

1)広汎性発達障害、注意欠陥/多動性障害 (ADHD)等の発達障害は、今、広く世間の注目を集めています。これらの特性を持つこどもは、その頻度が高いことが近年わかってきました。はっきりとした遅れはないが、何となく育てにくく、集団生活が難しいこれらの子どもたちは、個々のニーズに応じた教育や対応がなされないと学校で落ちこぼれきやすく、大きなこころの負担をかかえながら社会生活をおくることが多いと言われ、思春期・成人期における不適応や「引きこもり」、反社会的行為等の二次障害につながる可能性があることが知られています。ところが、発達障害の病因に関してはまだ不明の点が多く、生物学的指標もないことが、早期発見を妨げ、教育/療育上の大きな支障となっています。
当グループでは、発達障害の診断と指導、また、先端的な手法を用い� �障害特性を明らかにする研究に取り組んでおります。(参照:子どものこころの分子統御機構研究センター)


どのように肥満効果の自尊心と自信がない

2)小児期における睡眠障害は、成人の睡眠障害の様に昼間に眠くなるだけでなく、成長や発達に大きな影響を与えることが知られています。心身のリフレッシュメント、記憶の固定、免疫の強化等、睡眠の重要性は今さら言うまでもありませんが、特に子どもは大人に比べて長時間の深い眠りが必要であることがわかっています。睡眠時間が短い子どもでは学業成績が悪いというアメリカ合衆国の高校生のデータがありますし、また、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の子どもでは発達遅滞や学業不振、注意力低下、衝動性、攻撃性等の認知・行動面での合併症が多いとされています。このような行動面での異常が発達障害児の臨床症状に似ているということ� ��、多くの研究者の注目を集めております。睡眠不足が長期間続いた場合、または睡眠障害が適切に診断・診療されなかった場合、子どもの神経に永続的な変化がおこる可能性もあります。私たちのグループは小児睡眠外来を開設して、専門的な診断・治療を行っています。また、睡眠障害を持つ広汎性発達障害児は決してまれではありませんが、その病因や病態はよくわかっていません。私たちは、発達障害児に何故、睡眠障害が多いのか、どのように対処してあげるのが発達の面から適切なのかということを研究していきたいと考えています。


肥満のセルフヘルプ

3)当グループは神経科学研究を行っているグループです。従来の研究成果は以下の通りです。
I 神経炎症メカニズムの解明
脳における主要なプロスタグランジンであるプロスタグランジンD2(PGD2)は生理的な状態で自然の睡眠を誘導すると考えられています。しかしながら、慢性的な神経疾患において、PGD2は脳における免疫担当細胞であるミクログリアやアストロサイトの活性化を促して、炎症反応を増悪させることがわかりました。これは、クラッべ病のモデルマウスやアルツハイマー病(ヒトとそのモデルマウス)で確かめることができました。実際、クラッベ病のモデルマウスでPGD2産生抑制剤を使用すると、神経病理は軽減いたします。これらのPGD2産生抑制剤はこれらの疾患の治療薬になる可能性があります。

・Mohri et al. Hematopoietic prostaglandin D synthase is expressed in microglia in the developing postnatal mouse brain. Glia, 42(3): 263-274. 2003.
・Mohri et al. Prostaglandin D2-mediated Microglia/Astrocyte Interaction Enhances Astrogliosis and Demyelination in Twitcher. J Neurosci 26(16):4383-93, 2006.
・Mohri et al. Hematopoietic prostaglandin D synthase and DP1 receptor are selectively upregulated in microglia and astrocytes within senile plaques from human patients and in a mouse model of Alzheimer disease. J Neuropathol Exp Neurol. 2007 Jun;66(6):469-80.

 ところが、PGD2は低酸素性虚血性脳症(新生児仮死はその一つです)の場合には、血流を保って虚血性の病変を小さくするように働くことがマウスのモデルにおいて示されました。医療が進んだ現代においても低酸素性虚血性脳症は一定のリスクで発生し、脳性麻痺や精神遅滞等の後遺症に苦しんでいる家族が少なくありません。PGD2の働きを強めるような薬剤は既に開発されており、もしもこれらの薬が新生児仮死後の後遺症を軽減することができれば、我々開発に関わったものは小児科医冥利につきると言うものでしょう。

・Taniguchi et al. Prostaglandin D2 protects neonatal mouse brain from hypoxic ischemic injury. J Neurosci. 2007 Apr 18;27(16):4303-12.


"子供" "うつ病"

 また、PGD2はDuchenne型筋ジストロフィーでも産生が増えていることが推測されています。増加したPGD2は筋壊死の程度をひどくすることがモデルマウスの実験からわかってきました。実際に、このマウスにPGD2産生抑制剤を与えると、筋肉の壊死は軽くなります。

・谷池 その他。 ジストロフィン異常症におけるプロスタグランジンD合成酵素の発現. 厚生省精神・神経疾患研究8〜10年度研究報告書 筋ジストロフィー及び関連疾患の臨床病態と治療法に関する研究 Page30-32. 1999.
・Okinaga et al. Induction of hematopoietic prostaglandin D synthase in hyalinated necrotic muscle fibers: its implication in grouped necrosis. Acta Neuropathol 104: 377-384. 2002

・Mohri I, Aritake K, Taniguchi H, Sato Y, Kamauchi S, Nagata N, Maruyama T, Taniike M, and Urade Y. Inhibition of prostaglandin D synthase suppresses muscular necrosis. Am J.Path. 2009 in press.

最後に、複雑な話になりますが、PGD2産生酵素のひとつであるリポカリン型PGD2産生酵素(L-PGDS)は脱随、変性、低酸素等、いろんな良からぬ刺激を受けた脳において産生が増え、どうも良からぬ物質と結合して脳を守っているのではないかということを我々は見つけました。低酸素等の刺激を与えてわずか15分後には神経細胞での産生が増えます。このようなストレス蛋白としての性質を利用して強いストレスを受けた脳の場所を見つけることができるかも知れません。実際に、我々は、乳児突然死症候群で亡くなった赤ちゃんの脳で、呼吸や循環、覚醒等に影響を与える脳幹にL-PGDSが増えていることを見つけています。


・Taniike et al. Perineuronal oligodendrocytes protect against neuronal apoptosis through the production of lipocalin-type prostaglandin D synthase in a genetic demyelinating model. J Neurosci 22: 4885-4896. 2002.
・Kagitani-Shimono et al. Lipocalin-type Prostaglandin D Synthase (beta-trace) is Upregulated in the B-crystallin-positive oligodendrocytes and astrocytes in the chronic Multiple Sclerosis. Neuropath Appl Neurobiol 32:64-73. 2006
・Mohri et al. Lipocalin-type Prostaglandin D Synthase Is Upregulated in Oligodendrocytes in Lysosomal Storage Diseases and Binds Gangliosides. J Neurochem 97(3):641-51, 2006.
・Kanekiyo et al. Lipocalin-type prostaglandin D synthase/beta-trace is a major amyloid beta-chaperone in human cerebrospinal fluid. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Apr 10;104(15):6412-7.

U 睡眠の発達に及ぼす影響についての臨床研究
睡眠についての臨床研究では以下のことを行っております。
睡眠障害・睡眠不足は日中の情緒・行動だけではなく、肥満、耐糖能、インスリン抵抗性にも影響を及ぼすことが研究されております。我々は、重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群の寝たきりの37歳女性(重症心身障害)に経鼻的持続陽圧呼吸療法(nCPAP)を導入し、栄養摂取量が一定であるにも関わらず、治療導入後に体重が減少したことを報告しました。


・三善 その他. 高度肥満と注意欠陥多動性障害を合併した閉塞性睡眠時無呼吸症候群の1治療例日本小児科学会雑誌, 110(12): 1657-1664. 2006.
・レストレス・レッグズ症候群, 毛利育子、チャイルドヘルス 10(9):13-14. 2007.
・子どもの睡眠時無呼吸症候群、加藤久美、チャイルドヘルス 10(9):12-13. 2007.
・発達障害児における睡眠障害、谷池雅子、チャイルドヘルス10(9):14-15. 2007.
・谷池 他. 小児科領域の睡眠呼吸異常 立花直子編、睡眠医学を学ぶために 専門医の伝える実践睡眠医学、永井書店、306-312,2006.
・南保 他 編、パルスオキシメトリ アトラス、小池メディカル、1-38,2006.
・Kato-Nishimura et al (2008) Body weight reduction by CPAP treatment in a bedridden patient. Sleep Med 9:207-208
・Nabatame S, Taniike M, Sakai N, Kato-Nishimura K, Mohri I, Kagitani-Shimono K, Okinaga T, Tachibana N, Ozono K. Sleep disordered breathing in childhood-onset acid maltase deficiency. Brain Dev. 2008 May 19.
・Mohri I, Kato-Nishimura K, Tachibana N, Ozono K, Taniike M. Restless legs syndrome (RLS): an unrecognized cause for bedtime problems and insomnia in children. Sleep Med. 2008 Aug;9(6):701-2.
・Restless legs症候群、毛利育子、Clinical Neuroscience 27(2):176-180. 2009.

睡眠関連疾患の治療前後での、日中の情緒・行動等がどう変化するのか、小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群と骨計測による顎形態との関連についても研究を行っております。
また、我々の外来にはレストレスレッグズ症候群の患者も多く受診されます。これまでの経験では、多くの症例は鉄補充のみで症状が改善しておりますが、中には効果が得られない症例もあります。これまでの症例についてまとめ、報告しました。

・Mohri et al. Restless legs syndrome (RLS): An unrecognized cause for bedtime problems and insomnia in children. Sleep Med. 9:701-702,2008

我々の研究や臨床に興味を持たれた方は、いつでもご連絡ください。

 



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